2015年1月2日金曜日

登頂回望・号外編(その9) [堀田季何]  /   網野月を 



残雪をすすむやブーツ磨かるる      堀田季何
踏み入れた雪の中で、ブーツに着いた泥が落ちてゆく景である。それを「磨かるる」と表現した。受動態にしたことで、作者の歩く行動がかすんで、残雪が主語となってブーツを磨いている錯覚にとらわれる。中七の「や」で句切れを作って、前半と後半の主語(=主体)が入れ替わる技法である。残雪へ踏み込んでゆく作者が、世の中の汚れを落としてゆくようにも読め、奥深い句である。

「芳春」【俳句新空間No.2】 2014(平成二十六)年[新春帖]所収