2015年7月3日金曜日

【俳句新空間No.2】中西夕紀の句 2/ 陽美保子


  混み合へる仏壇を閉ぢ夏蒲団 中西夕紀
考えてみれば、この世よりあの世の方が余程混んでいるに違いない。たとえば、仏壇ひとつに自分と配偶者の両親の位牌を引き受けたとしても四つの位牌が入ることになる。なんとも狭苦しいことだ。せいぜい長生きをして、人口密度の低いこの世でゆっくり寝たいものだ。仏壇に比べ、夏蒲団が広々と涼しげに見える。

〈骨の音涼しく傘を畳みけり〉は、仏壇の句を読んだ後のせいか、「骨の音すずしく」まで読んで、骨壺を想像したが然にあらず。「傘」ときて楽しく裏切られる。