2015年9月23日水曜日

【俳句新空間No.2】 津高里永子の句 10 / 仲寒蟬



羽抜鶏搔きし砂場の砂黒し 津高里永子
連作では終わり方もまた大事。このような光景は羽抜鶏の句としては珍しいのではないか。羽抜鶏そのものの風情や哀れさに注目するのが常道であろうが、鶏が引っ掻いた砂場の砂が黒いという発見だけを詠んだ。しかし肩透かしを食ってもあまり嫌な気分ではない。それは目の前の景がきちんと書かれているから、作者が、従って読者もそこにいるという臨場感が味わえるから、であろう。