2017年3月24日金曜日

【俳句新空間No.3】平成二十六年甲午俳句帖 [中西夕紀] / 小野裕三


夜店の灯平家の海を淋しうす  中西夕紀
栄華と零落。平家の血を彩る波乱の物語は、日本の風土のどこかに深く刻まれているのだろう。都が栄華という光の部分を象徴するものであれば、海は零落を想起させる影の場所だ。そして夜店もまた、たくさんの影に囲まれた小さな光の場所である。その対比を誰もが知っているから、夜店の明るさはどこか切ない。夜店を愉しんだ人はみな、巨大な夜の暗がりに押し戻されていく。まるで平家が落ち延びていった、あの海のような淋しさへ。